ひとり会社では顧客との継続取引が大事です。ここでは新規取引先とのトラブルを防ぐ要件確認フォーマットと活用方法例を公開していきます。
実は、取引開始の基本さえ抑えておけば、トラブル発生リスクは抑えることができます。
実際に、私は要件確認フォーマットを作成してから、取引先と一緒に確認をすることで、認識齟齬によるトラブルは半減しました。
この記事では、「フォーマットが活躍する3つの理由、要件確認フォーマットの実例」などをご紹介していきます。
この記事を読み終えれば、新規取引時にチェックすべきことがわかり、準備もラクになります。結果、仕事の時短に繋がるので、別の業務に時間が使えるようになります。
要件確認フォーマットは”仕事の時短”になる
フォーマットをつくることは、仕事時間の時短に直結します。新規クライアントから提案書の作成依頼があれば、確認すべきことは多数あります。例えば、
- 提案書の目的、用途
- 提案書が満たす要件
- 提案書形式
- 納期
- 費用
これ以外にも「提案書(成果物)イメージ」「チェック回数」「支払いサイクル」などがあります。これらの項目を毎回考えて確認していくのは、非常に非効率ですし、抜け漏れが発生してしまう可能性もあります。ここで活躍してくれるのが、「要件確認フォーマット」です。フォーマットに従ってヒアリングをしていけば、抜け漏れなく情報を確認できるので、確認項目を思い出す必要はなくなり、時短につながります。
新規取引でフォーマットが活躍する3つの理由
めでたく新規取引先(新規クライアント)とお仕事できる機会をいただきました。このチャンスは大切にしたいですよね。ひとり会社では新規顧客を継続顧客(リピート顧客)に育てることが、生存戦略の1つです。限られた時間を新規開拓だけに奪われてしまうと、時間が幾らあっても足りません。
なので、新規顧客に満足してもらい、次に繋げていく。そのサイクルをつくるには、初回取引時にクライアントが満足いく成果物を収め、「また仕事を頼みたい」と思ってもらう必要があります。その第一歩として、フォーマットが活躍するというわけです。
ここでは、要件確認フォーマットが活躍する3つの理由について説明します。
- 新規取引先の信頼を得て継続顧客にしよう
- 納品物の修正を繰り返しても売上は増えない
- 最悪、取引先が支払いを渋るケースも
新規取引先の信頼を得て継続顧客にしよう
前述の通り、ひとり会社では既存顧客を増やしていくことが大切です。既存顧客との付き合いが長くなると紹介案件も増え、自ら新規取引先の開拓は不要になります。ご紹介いただいた新規取引先の期待に答え、またリピートしてもらう(既存顧客化)サイクルができれば売上は安定します。
新規取引をリピート化する上で大切なのは、初回取引です。初回取引で満足いく成果を上げなければ、次に発注されることはないでしょう。ただ、初回取引だからこそ難しいと感じるのは、相手の求めていることが掴めないケースです。私に期待していること、目的、内容、成果物、費用感…。どこまで求めている?何を期待している?これらの疑問をフォーマットを用いて解決しています。
相手が求めている成果物の基準(期待値)がわかることで、こちらがやるべきこともわかる。そして、満足度の高い納品物を収めることで、次回もお仕事をしたいと思っていただく。このサイクルが大切です。
納品物の修正を繰り返しても売上は増えない
フォーマット活躍理由の2つ目、無駄を防ぐ。
納品物のイメージがずれていた場合、クライアントから修正指示が来ます。軽微であればよいですが、大幅な修正だった場合、手直し工数が膨大に発生し、時間が奪われてしまいます。そうなると、時間単価はどんどん下がる。売上・利益効率がとても悪くなる。極端な例ですが、下記2パターンをご覧ください。
A:10万円で依頼された仕事を10時間で納品(時給単価1万円)
B:10万円で依頼された仕事を50時間で納品(時給単価2千円)
皆さん、Aの方がよいですよね?納品物に対する修正指示が増えると、Bに近づいていく。時給単価1万円が数千円に下がる。結局は忙しくて儲からない。
そうならないよう、最初に要件を確認しておくことが大切です。私の体験で恐縮ですが、結構ふわっとしたオーダー、ファジーな要件は多いんです。「あうんの呼吸」「よしなにやってほしい」「言わなくてもわかるでしょ」言語化を避けるタイプの方ですね(皆さん忙しいので仕方はないですが)。リピート顧客になれば、相手が求める基準は掴めていくので問題にならないのですが、新規取引だとまだわからない。
例えば、クライアントから「名古屋から北の都市に集合」と声がかかります。
私は「北の都市といえば北海道でしょ」
一方、クライアントは「北の都市といえば東京だろう!戻ってこい!!」
それなら、最初からいってよ・・・極端ではありますが、最初に要件を確認しておけば無駄は防ぐことができました。
最初から要件は確認する、すべて言語化させることは難しいかもしれませんが、大事なポイントだけでも抑えておく。フォーマットがあれば、両社で確認しながら会話ができるのでラクです。
最悪、取引先が支払いを渋るケースも
活躍理由3つ目、取引先が支払いを渋る(恐ろしい…)
私は経験ありませんが、要件を満たしていないから減額など不利益な変更を迫るケースもあるようです。余程のことがなければ、支払いまで渋るケースはないと思いますが…
ただ、企業とのトラブル原因に支払い遅延や減額、またフリーランスの7割が報酬未払いになった経験ありと回答しています。意外と身近な問題なのかもしれません。
いずれにせよ、要件を満たせていないことで、クライアント側は不満足だと思います。そうなると、リピートに繋がる可能性は下がります。なので、最初から満足のいく納品ができるよう、要件を確認しておきましょう。
あと、口頭約束だと自分が都合よく記憶しがちです。水掛け論を防ぐためにも、書面なりで要件は残しておきたいです。
【ダウンロード可】要件確認フォーマットを公開
ここからは、実際に私が使用しているフォーマットを記載します。これはあくまでも、私が使うことで効果を発揮するもので、皆さんにとってベストではないかもしれません。それでも、参考にはなると思うので、自分なりにカスタマイズして使用してみてください。
名称/業務内容/業務目的
- 名称:新規取引先から依頼された業務の呼び名
- 業務内容:依頼業務を端的に表した内容を入力
- 業務目的:取引先が依頼した業務の背景を理解します。「何のため」に利用していくかを知り、取引先が使いやすい(知りたいこと)を準備します
作業項目/業務詳細
- 作業項目:業務目的を細分化し、作業の全体像を示した見出し
- 業務詳細:さらに作業項目を細分化し、業務を具体化。ここで業務全体像を確認しておくことで、取引先との「認識の相違(ズレ)」を防ぎます。認識の相違は結構厄介で、お互いが同じ言葉を見て、話しても、それぞれが異なる解釈をしてしまうケースがあります。なので、業務詳細の段階で納品物の内容(資料内に含める内容)を確認しておきましょう
制約/注意事項・納品形式
- 制約/注意事項:資料作成にあたり考慮すべきこと、できないこと(やりたくないこと)を把握しておきます。例えば、マーケティング戦略立案を依頼された場合、クライアント側の会社状況によって「できる施策/できない施策」は変わります。事前に把握しておけば、戦略を考える際に無駄に調べること、考えることを減らすことができます
- 納品形式:納品物を収める形式を確認します。例えば、内容だけでよいのか、それとも内容に加えてデザイン性まで求めるのか。また、資料作成なら「パワーポイント」「Googleスライド」、フォント形式、サイズ、デザイン性など、作業範囲を確認します
作業場所/作業期間/確認者
- 作業場所:常駐の有無、定例会議の有無など、作業上の制約を確認します
- 作業期間:納品までの期間、取引先と握っておきたい事項を書いておきます。私は作業期間だけでなく、修正回数と修正指示のタイミングも入れてます。これがあることで、無制限の修正対応を防ぐことができます
- 確認者:チェック人数とフローを確認します。依頼者だけが確認するのか、依頼者の上位者まで確認が入るのか、確認者が増えれば作業期間や指摘事項も増える可能性があります。私は確認者の数で仕事時間に余裕をもたせるようにしています
価格/支払い条件/契約関連/その他
- 価格:税込、税抜はしっかりと確認。数千~数十万変わるケースもあります
- 支払い条件:取引先によって支払いサイクルは異なるので確認。できるだけキャッシュは早くもらえるように設定。金額が大きい取引なら、着手金・企画費用など細分化させて、支払いをお願いするケースもあります
- 契約関連:書面締結の有無。発注書ベースだけでよいのか、取引に関する基本契約書を締結するのか、書面の有無も事前確認します
- その他:最後、取引先に伝えておきたい内容を書いておきます。私は要件以外の作業については、別途見積、契約の一文は入れてます。なんとなく安心なんです。
フォーマットダウンロードはこちら
今回ご紹介したフォーマットは下記からダウンロードができるので、ぜひご活用ください。
※Googleスプレッドシートです。左上ファイル→ダウンロードからEXCELなど選択ください
まとめ:フォーマットで認識齟齬を減らす
上記で紹介した「要件確認フォーマット」を活用していただくと、新規取引の確認事項で悩みは減り、抜け漏れもなくなり時短もできます。
最後にもう一度フォーマットの目的を確認しておきましょう。
- 新規取引先の信頼を得て継続顧客にしよう
- ひとり会社ではリピート顧客が超大切
- 初回取引で「また仕事をしたい」と思ってもらう
- 納品物の修正を繰り返しても売上は増えない
- 修正しても売上は1円も増えず、時給単価は下がるだけ
- 最悪、取引先が支払いを渋るケースも
- 口頭約束だと水掛け論になり、最悪減額や支払い渋る人もいる
フォーマット項目のすべてを書く必要はありませんが、手元にあるだけで、確実に抜け漏れはなくなるのでぜひ活用してみてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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